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2014年7月31日 (木)

終末期医療におけるスピリチュアルペインについて⑥

(6)スピリチュアルケアについて
 スピリチュアルペインに対するケア(スピリチュアルケアといいます)についてお話しいたします。
 人間には、言葉に表す事でそれを認識するという特性が備わっています。ギリシャ語でロゴス、つまり言語のことですが、このロゴスは欧米では「神が与えたもの」として言葉を大事にします。また仏教でも、人間は五官から取り入れた情報を言語化して、それを言葉で記憶して理解するといいます。いずれにしても、自分には何が問題なのか、今何に苦しんでいるのかを言語化することで、自分で認識できるようになるのです。だから、患者がスピリチュアルペインを言葉で表出するということは、医療関係者にとっても、患者本人にとっても重要なことなのです。
 人は自分の苦しみを聴いてもらうことで、気持ちが落ち着き、考えが整います。相手の苦しみに耳を傾ける事、つまりは聴く事に徹すること、これを傾聴(けいちょう)といいます。この場合、決して自分の意見や批判をいわない、アドバイスもしない、話を勝手に要約しないという事が重要です。
 傾聴に関してもっとも大変なのは、沈黙に耐えるということです。多くの場合、患者本人は、何が問題なのか、どうしてほしいのか、何が希望なのかが混乱してしまい、うまく言葉に出せない状態にあります。それを沈黙の中で、必死で熟考しているのですから、それを邪魔しない事が重要です。相手に、自分の思いを語らせ切る事で、スピリチュアルペインは大分軽減するのですが、しかしそれを語るには、相当のエネルギーが必要です。
その為のエネルギー充電期間が、まさに沈黙なのです。だから聴き手が沈黙に耐えかねて、自分の意見をいったり、話題をそらしてしまうと、台無しになってしまいます。聞いているふりをして聞き流しているだけじゃないかと患者に思われるのが、もっと最悪です。常に意識を集中させて、いつも貴方の言葉に耳を傾けていますよ、という姿勢を見せ続けなければなりません。ですから傾聴には、特別な訓練が必要となるのです。
 またスピリチュアルケアに重要なのは、同意ではなくて共感であるといわれています。「私はあなたの苦しみが理解できます。そして私もそう思います。」というのが同意です。この場合、患者側にしてみれば、病気でもないあなたに、私の苦しみなんか分かる訳はない、という感情を起こしかねません。一方、「あなたは、こういう事で苦しんでいらっしゃるのですね。」というのが共感です。
同意と共感を比較してみると、同意の主語は「私」です。一方共感の主語は「あなた」です。つまり、あなたの苦しみを聴いて、その苦しみをしっかりと受け取りましたよ、と相手に返す事が共感です。私がどう観察したか、それが私にとって同意できるかどうかといった事は一切含まれていません。この共感的態度を示すことで、私の苦しみがわかってもらえた、この人は私の苦しみの理解者だ、と感じるのです。
 人間にとっての一番の恐怖は、孤独感です。どうしようもない孤独感に襲われた時、人は自殺に及ぶ事さえあります。特別な言葉を必要とせずに、ただ傍にいてくれる人がいる、これだけで人間は落ち着くのです。発達心理学者の浜田壽美男氏の言葉です。
  人には、自分が誰かから見られているということを意識すること
  によってはじめて、自分の行動をなしうるというところがある
 特別な言葉を必要とせずに、ただ傍にいてくれる人がいる、それだけで人間は落ち着くのです。無条件で「共にいる」ということ、例えば妻がすぐそばにいてくれるだけでいい、夫は無口であまりしゃべらないけれど、黙って横にいてくれるだけでほっとする、という感覚です。
ただ、共にいてくれる人は、一般的には他人より身内、同じ身内でも兄弟よりは子供か夫婦、子供よりも夫婦の方が最良ではないかと思うのですが、これまたそれぞれの家庭には事情がありますので、一概にはいえないところが現状です。

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