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2015年11月

2015年11月15日 (日)

大便と腸内細菌の話 4

 腸内細菌叢のディスビオーシスが問題ならば、健常者の便中の腸内細菌を移植してやればいいじゃないか、という発想は容易に生まれます。実際に獣医領域では、馬の慢性下痢(げり)等に対して行われてきました。中国や欧米では、抗菌薬や輸液療法のなかった昔には、健常者の便中の腸内細菌移植が行われていたそうです。


健常者とはいえ、便中の腸内細菌を移植するという方法は、特に衛生観念の強い日本人にはなかなか受け入れ難い治療法ですよね。

しかし、抗菌薬では完治しない再発性難治性偽膜性腸炎患者に対して、健常者の便中の腸内細菌を移植すると、偽膜性腸炎の原因菌が除菌できたという報告が多数発表されています。問題は、便中の腸内細菌をどこからどうやって入れるのか。


それは胃内視鏡を用いて胃ないしは十二指腸に入れる、または注腸で大腸に直接入れるという方法です。まさか口から飲ませる訳にはいきませんから。


また肥満者は腸内細菌の多様性が減少していますが、この肥満者に対して、やせた健常者の便中腸内細菌を移植すると、肥満者のインスリン抵抗性が改善し、腸内細菌の多様性が回復するとの報告があります。ただこの治療法がもっとも期待される腸の炎症性疾患に対する有効性は、確立していません。有効であるという報告と、無効であるとする報告とがあります。

 プロバイオテックスとは、宿主(しゅくしゅ)に保健効果を示す生きた微生物、またはそれを含む食品をいいます。要するにヨーグルトなどの発酵乳のことです。ヨーグルトには整腸作用があることなどは以前から知られていましたが、他にも発がんリスクの軽減作用、アレルギー軽減作用、花粉症軽減作用、胃内ピロリ菌低減作用などがあります。


ただしプロバイオテックスには、胃酸などの上部消化管における消化液でも生存可能であり、消化下部に正着して増殖可能であり、腸内細菌叢のバランス改善、腸管内腐敗(ふはい)菌の低下などの有効効果があり、そして何よりも安全性が高いという条件に適した菌である必要があります。

大便と腸内細菌の話 3

 消化管内の細菌ですが、まず口腔内にも細菌が多数存在します。胃には胃酸が分泌されていますので、無菌という訳ではありませんが、細菌の数は激減します。十二指腸、空腸も同様に消化液が分泌されていますので、細菌数は多くありません。それが空腸、大腸になると細菌数が激増します。また腸管内の細菌は、各々がテリトリーを保ちながら集団を形成しています。この集団のことを腸内細菌叢(そう)ないしは腸内細菌フローラといいます。

叢は草むら、フローラはお花畑のことです。腸内細菌の集団とお花畑を結びつけるという発想はすごいですよね。なにせ、大便の半分以上は、この腸内細菌とその死骸ですからね。メルヘンというか、グロテスクというか……。ただ、腸内細菌フローラが形成されているおかげで、食物とともに病原菌が少々入っても、腸内細菌により排除されるのです。

 腸内細菌には、好気性菌(こうきせいきん)(生存のために酸素を必要とする菌で大腸菌など)、通性嫌気性菌(つうせいけんきせいきん)(酸素があってもなくとも生存できる菌で乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)など)、偏性嫌気性菌(へんせいけんきせいきん)(酸素があると生存できない菌でビフィズス菌など)があります。とくに腸内細菌の中でも善玉菌として名高い乳酸桿菌は、酸素がある上部小腸でも生育可能で、糖を分解して乳酸を産生しますが、ビフィズス菌の方は酸素のあまりない大腸で生存し、酢酸と乳酸を産生します。

これに加えて下部消化管では食物繊維の嫌気性菌による発酵に伴い、他の短鎖脂肪酸も誘導される結果、大腸内は酸性に保たれます。この酸性環境下では、ウェルシュ菌などの腐敗菌(悪玉菌)の増殖が抑制されます。

 ヒトは母体内にいるときには無菌状態ですが、出生する瞬間に細菌の洗礼を受けることになります。生後直後から離乳期に至る時期に住み着いた腸内細菌は、我々が免疫システムを確立する上で、大変重要です。まずは大腸菌、腸球菌、ぶどう球菌などが増殖を開始し、その後乳酸桿菌やビフィズス菌が増殖を開始します。


乳児期には乳児型ビフィズス菌が優位となって腸内細菌フローラが安定するため、便は酸っぱい臭いがします。離乳期になるとビフィズス菌は成人型にかわり、腸内細菌フローラは成人に近づくようになります。これが中高年になると、ビフィズス菌が減少し、逆に腐敗菌であるウェルシュ菌が増加するため「お父さんのうんこした後のトイレは臭い」と娘達に嫌われる原因になります。

 私達の顔や姿、性格が十人十色であるように、腸内細菌もまた各個人に特有なパターンがあります。一卵性双生児は遺伝子的にはほぼ一緒であるため、顔も姿もそっくりですが、実は腸内細菌フローラは必ずしも一緒ではありません。腸内細菌フローラの場合、遺伝的関与は低く、生後直後から免疫の成立する離乳期までの環境因子が重要であることがわかっています。

 この腸内細菌をどのように調べるのでしょうか。現実問題として、数百種類にもおよぶ腸内細菌を、便培養で一つ一つ菌を同定するという方法には、限界があります。ところが最近、遺伝子解析法を用いて、腸内細菌叢(そう)の構成や機能が調べられるようになりました。その結果、腸内細菌叢の菌種構成、菌種数、菌数の異常(ディスビオーシス)が種々の疾患に関与していることが判明しました。

 潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)やクローン病などの腸の炎症性疾患では、健常者に比較して腸内細菌叢の多様性が低下しています。しかも健常者では腸内細菌叢に経時的変化はほとんどみられませんが、腸の炎症性疾患患者では、経時的変化が大きく、炎症が治まっている時と炎症が悪化している時とでは腸内細菌叢が異なることも知られています。

 肥満が伝染する、という衝撃的(しょうげきてき)な論文も発表されています。マウスの実験ですが、無菌マウスに対して、肥満マウスの腸内細菌を移植したグループと、やせ型マウスの腸内細菌を移植したグループと比較すると、肥満マウスの腸内細菌を移植したマウスの方が、体重は増加しました。つまり、デブとやせでは腸内細菌叢の構成が異なることを示しています。肥満以外にも、糖尿病、非アルコール性脂肪肝炎、動脈硬化、自己免疫疾患、脳神経疾患などでも腸内細菌叢のディスビオーシスが関与している可能性があります。

大便と腸内細菌の話 2

 皆様方は、自分の便をきちんと見ていますか?自分の便をきちんと見る習慣は重要です。便が真っ黒である場合、タール便といいますが、食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)の破裂、胃、十二指腸潰瘍(かいよう)や癌などによる、上部消化管から出血の可能性があります。放置するとショックとなり、命を失うこともあります。


また逆に、便が白い場合も問題になります(白色便)。赤血球の代謝産物であるビリルビンが肝臓で代謝されて胆汁となり、胆道を通って腸管に排出されます。便の色はこの胆汁の色です。それが白色便の場合、胆汁がきちんと排出されていない、つまり胆道系が、結石や癌でつまっていることを意味しています。これまた緊急を要する場合があります。また異常という訳ではありませんが、人工乳の新生児の便は緑色をしています。

 子育てを経験した方であれば、気づかれたかもしれませんが、新生児や乳児の便はあまり臭くないのに、離乳食が始まる頃になると、段々大人の便の臭いに近づき、完全に離乳すると、大人と同じような臭いの便になります。また、牛馬のような草食動物は、仔牛、仔馬時代には母乳の他に、母親の大便を食べることを知っていますか?

 最新医学の領域では、腸内細菌が第二の臓器として注目されています。私達の腸は、胎児の時には無菌状態ですが、出生後に無数の細菌が生着し、共存関係を築きます。例えばほ乳類の場合、食物繊維(しょくもつせんい)を消化する能力はほとんどありませんが、腸内細菌を獲得(かくとく)することで消化吸収が可能になります。だから仔牛、仔馬は、母親の便を食べることで、草を消化吸収できる腸内細菌を自分の腸内に取り込むのです。

 ヒトの消化管には約千種類、約百兆個の細菌が生息しています。特に腸内細菌の重量は、1.5キログラムにも及びます。ヒトは進化の過程で、エネルギー摂取のための消化酵素(しょうかこうそ)を獲得(かくとく)しましたが、それだけでは充分ではありません。持ち合わせの消化酵素だけでは消化できない食物を、腸内細菌の力を借りて消化しています。腸内細菌により小腸内でブドウ糖吸収が増加するばかりではなく、植物繊維(せんい)を発酵(はっこう)させて、酢酸(さくさん)、プロピオン酸、酪酸(らくさん)などの短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)が産生され、これらを吸収することでエネルギーに利用しています。


この短鎖脂肪酸が、腸管の上皮細胞の増殖や粘液分泌機能をうながし、水やミネラルの吸収のためのエネルギーにも利用されます。また免疫細胞の分化、成熟化に関与し、病原菌に対する感染防御に関与していることが明らかになってきました。

大便と腸内細菌の話 1

 皆さんは子供の頃、こんな妄想(もうそう)を抱いたことはありませんか?自分が大好きなアイドルや女優はうんこなんかしないと。しかし現実には、絶世美女でもイケメン俳優でも、例外なくうんこをします。

どれほど偉そうなことをいったところで、所詮人間は、飯食ってうんこする存在なのです。だから仏教では人間のことを、卑下(ひげ)した表現として、臭皮袋(しゅうひたい)とか糞袋(くそぶくろ)といいますます。

 大便の検査で広く行われているのが便潜血検査。これは便に血液が混じっているかどうかを調べる検査であり、近年では大腸癌(だいちょうがん)検診のスクリーニング検査として重要です。それから便培養。下痢や食中毒の原因菌を調べる目的で行われます。昔は赤痢(せきり)が、近年ではO157感染症が話題になります。それから寄生虫検査。便中に虫卵があるか否かを調べます。

 小衲の苦い思い出話をします。昭和61年、医者になって5年目、自信満々で内科医として働いていました。ある日外来に初診できた患者が、「便の中から虫がでてきたから診てくれ」といってきました。

ところが寄生虫患者を一度も診察治療したことがありません。確かに小学生の頃には、学校の検便で寄生虫が発見されて治療を受けたという話は見聞していました。しかし自分が医者になってからは、寄生虫を疑って検査したこともないし、どんな薬を処方したらよいかも思いつきません。そんな私の困った様子を見ていたベテラン看護師が、その患者を副院長先生の外来に回してくれました。副院長先生は昭和26年に医者になられた方です。後日その先生は、笑いながらこういわれました。

「そうか。君達の年代は、心筋梗塞の診断治療はできても、寄生虫患者を診たことがないのか。俺達が医者になった頃は、患者を診たらまず寄生虫を疑え、と教わったものだ。」
もっとも内科医を30年やりましたが、寄生虫患者に関与したのは、その時が最初で最後でした。

平成27年一向寺通信 秋 彼岸号

平成27年一向寺通信秋彼岸号をお届け致します。

田代三喜に関するお知らせです。 一向寺でお祀りしている田代三喜像を、平成二十七年九月十八日 NHKテレビが取材、 撮影しました。今年中に放送される予定です。

詳細は一向寺掲示板にてお知らせ致します。

 

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