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2015年11月15日 (日)

大便と腸内細菌の話 3

 消化管内の細菌ですが、まず口腔内にも細菌が多数存在します。胃には胃酸が分泌されていますので、無菌という訳ではありませんが、細菌の数は激減します。十二指腸、空腸も同様に消化液が分泌されていますので、細菌数は多くありません。それが空腸、大腸になると細菌数が激増します。また腸管内の細菌は、各々がテリトリーを保ちながら集団を形成しています。この集団のことを腸内細菌叢(そう)ないしは腸内細菌フローラといいます。

叢は草むら、フローラはお花畑のことです。腸内細菌の集団とお花畑を結びつけるという発想はすごいですよね。なにせ、大便の半分以上は、この腸内細菌とその死骸ですからね。メルヘンというか、グロテスクというか……。ただ、腸内細菌フローラが形成されているおかげで、食物とともに病原菌が少々入っても、腸内細菌により排除されるのです。

 腸内細菌には、好気性菌(こうきせいきん)(生存のために酸素を必要とする菌で大腸菌など)、通性嫌気性菌(つうせいけんきせいきん)(酸素があってもなくとも生存できる菌で乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)など)、偏性嫌気性菌(へんせいけんきせいきん)(酸素があると生存できない菌でビフィズス菌など)があります。とくに腸内細菌の中でも善玉菌として名高い乳酸桿菌は、酸素がある上部小腸でも生育可能で、糖を分解して乳酸を産生しますが、ビフィズス菌の方は酸素のあまりない大腸で生存し、酢酸と乳酸を産生します。

これに加えて下部消化管では食物繊維の嫌気性菌による発酵に伴い、他の短鎖脂肪酸も誘導される結果、大腸内は酸性に保たれます。この酸性環境下では、ウェルシュ菌などの腐敗菌(悪玉菌)の増殖が抑制されます。

 ヒトは母体内にいるときには無菌状態ですが、出生する瞬間に細菌の洗礼を受けることになります。生後直後から離乳期に至る時期に住み着いた腸内細菌は、我々が免疫システムを確立する上で、大変重要です。まずは大腸菌、腸球菌、ぶどう球菌などが増殖を開始し、その後乳酸桿菌やビフィズス菌が増殖を開始します。


乳児期には乳児型ビフィズス菌が優位となって腸内細菌フローラが安定するため、便は酸っぱい臭いがします。離乳期になるとビフィズス菌は成人型にかわり、腸内細菌フローラは成人に近づくようになります。これが中高年になると、ビフィズス菌が減少し、逆に腐敗菌であるウェルシュ菌が増加するため「お父さんのうんこした後のトイレは臭い」と娘達に嫌われる原因になります。

 私達の顔や姿、性格が十人十色であるように、腸内細菌もまた各個人に特有なパターンがあります。一卵性双生児は遺伝子的にはほぼ一緒であるため、顔も姿もそっくりですが、実は腸内細菌フローラは必ずしも一緒ではありません。腸内細菌フローラの場合、遺伝的関与は低く、生後直後から免疫の成立する離乳期までの環境因子が重要であることがわかっています。

 この腸内細菌をどのように調べるのでしょうか。現実問題として、数百種類にもおよぶ腸内細菌を、便培養で一つ一つ菌を同定するという方法には、限界があります。ところが最近、遺伝子解析法を用いて、腸内細菌叢(そう)の構成や機能が調べられるようになりました。その結果、腸内細菌叢の菌種構成、菌種数、菌数の異常(ディスビオーシス)が種々の疾患に関与していることが判明しました。

 潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)やクローン病などの腸の炎症性疾患では、健常者に比較して腸内細菌叢の多様性が低下しています。しかも健常者では腸内細菌叢に経時的変化はほとんどみられませんが、腸の炎症性疾患患者では、経時的変化が大きく、炎症が治まっている時と炎症が悪化している時とでは腸内細菌叢が異なることも知られています。

 肥満が伝染する、という衝撃的(しょうげきてき)な論文も発表されています。マウスの実験ですが、無菌マウスに対して、肥満マウスの腸内細菌を移植したグループと、やせ型マウスの腸内細菌を移植したグループと比較すると、肥満マウスの腸内細菌を移植したマウスの方が、体重は増加しました。つまり、デブとやせでは腸内細菌叢の構成が異なることを示しています。肥満以外にも、糖尿病、非アルコール性脂肪肝炎、動脈硬化、自己免疫疾患、脳神経疾患などでも腸内細菌叢のディスビオーシスが関与している可能性があります。

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