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2018年3月14日 (水)

終末期医療について(3)

ドクターミネの毒舌健康法話
 私達は一日約二二○○キロカロリー程度を食べています。最低限の生命維持には一四○○キロカロリー程度は必要です。よくご存知の点滴で補えるのは、一日中点滴をしても、せいぜい三〇〇キロカロリー程度です。一〇〇〇キロカロリー以上不足します。もし手術のために一時的に禁食となる患者には、頸静脈(けいじょうみゃく)や鎖骨下静脈(さこつかじょうみゃく)からカテーテルを心臓まで挿入(そうにゅう)して、心臓に直接高濃度の栄養をいれます(中心静脈栄養)。この方法の最大の問題点は感染です。高濃度の栄養をいれるカテーテルですから、どんなに消毒して留置しても永く留置すれば、そのカテーテルに沿って細菌が入り込んで、敗血症をおこします。ですから、留置できるのがせいぜい一ヶ月限度ですので、終末期医療には向きません。一方胃瘻(いろう)は、チューブがお腹の外に出ていますが、もともと消化管は菌と仲良く暮らしている臓器で、特に胃は塩酸が胃液として分泌(ぶんぴつ)されているため、胃液により菌はある程度死にします。その先の腸は、そもそも乳酸菌や大腸菌といった菌が生息していて、いわゆる陣地を造っていますから、外から菌が侵入してきても、それらを排除します。ですから、胃瘻を通じて細菌が混入しても、ほとんど問題が起こりません。
 ただ、衰弱(すいじゃく)して意識もない状態で、胃瘻や人工呼吸器につがれて、かろうじて生命を維持している姿をみると、これが人間の尊厳(そんげん)を維持した姿といえるのか、と感じられます。末期癌の場合、すべての臓器が衰弱していますので、胃瘻をつくって無理矢理栄養を押し込んでも、かえって患者を苦しめることになります。呼吸に関しても同じ事が言えます。ですから末期癌の多くの場合は、人工呼吸器も胃瘻も行いません。
 悩ましいのは、脳卒中や認知症の終末期の場合です。慢性期で寝たきりとなった終末期患者が、徐々に呼吸が弱くなれば、人工呼吸器をつけても余命延長は期待できないので、ご家族と相談して、人工呼吸器を装着しないという選択が可能です。しかし脳卒中急性期で実施された人工呼吸器の場合は、慢性期で自発呼吸が出てこなければ、人工呼吸器をはずすことができず、いやが上にもずっと呼吸器がついたままの状態になります。
 胃瘻の場合は異なった問題が生じます。そもそも口は、食べ物の道(食道)と呼吸の道(気道)と共通です。のど(喉頭(こうとう))で気道、食道に分かれます。飲み込む場合、食物や飲み物が気道に入らないように、まず気道にふたをして呼吸を止めます。食物がすべて食道に入った後、気道のふたを開けて呼吸を再開します。それがもし、脳血管障害などでこのシステムに不具合が生じると、食物や水が食道に送れないばかりか、気道に入る事もあります。食物や飲み物が少しでも肺に入ると、重篤(じゅうとく)な肺炎をおこし(嚥下性肺炎(えんげせいはいえん))死にいたります。ですから医師は胃瘻を勧めるのです。嘔吐(おうと)による誤嚥(ごえん)や、一日約二リットル出るだ液の誤嚥は防げませんが、胃瘻を作ると、その後年単位で寿命が維持されることもまれではありません。
 他人事として人工呼吸器や胃瘻の患者をみると、こんな状態になってまで生きていたくないと感じて、七割以上の人が胃瘻等を望まないと回答します。しかし実際に脳卒中で寝たきりになった場合、自分では意思表示できませんから、胃瘻を作るか否か、家族がその決断を迫られます。胃瘻をつくっても、麻痺(まひ)や認知症はよくなりません。ただ寝たきりの状態で寿命だけが延びるのです。「延命措置としての胃瘻や人工呼吸器装着を拒否する」という本人からの、遺言書のような法的効力のある文書でもないかぎり、家族は迷いながら決断するのです。

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