ドクターミネの「老・病・死」を見つめる法話 第四回
同級生が昨年、白内障の手術を受けた。手術のおかげで、どれほどよく見えるようになったかを聞かされたが、話の内容が思い出せないぐらいショックを受けた。七十代、八十代での白内障はよくある話だ。そもそも主な原因は加齢なので、六十代で白内障というのも決して稀ではないが、しかし自分がそういう年代になっているという現実を突きつけられると、微妙な気持ちになるのも事実だ。糖尿病は白内障を加速させるので、食事の量も最近気にし始めた。また紫外線が悪影響をもたらすことも知られているので、天気の良い日に外出するときには、極力サングラスをかけるようにしている。「遅かりし 由良の助」かも知れないが。
住職も医師もいわば客商売である。だから気になるのは「臭い」である。汗の臭いや加齢臭などの体臭対策のために、洗剤や柔軟剤が多数販売されているし、テレビコマーシャルも盛んである。ただ、香料のきついものもあり、臭いを臭いで誤魔化している感じもする。客商売である以上、体臭対策も重要かもしれないが、それが過剰になると、心を病んでしまう。だから何事も「程々」がよい。ドクターミネは、「洗剤や柔軟剤の銘柄」にこだわるのではなく、下着やシャツは常に清潔なものを身につけるように、そして出来る限り毎日風呂に入るようにしている。
しかし一番厄介なのは「口臭」である。住職になって妻から「口が臭い」と指摘を受ける。医師に時代は「口臭」を指摘されることはなかった。これは「口臭」がなかった訳では無く、誰も指摘しなかっただけのことであろう。「お前、口が臭いよ」という指摘は、仲の良い間柄でも気が引ける。医師を引退して住職になり、一日中妻と顔をあわせるようになると、容赦のない指摘に晒される。
肝不全、腎不全の患者は、独特の口臭があり、その臭いを知っている内科医はすぐに気づく。しかし一番多い原因は口腔内にある。歯周囲炎(いわゆる歯槽膿漏)やう歯(虫歯)はまず治療する必要がある。ドクターミネは歯周囲炎が原因ですでに奥歯二本を失っていて、部分入れ歯となっている。失う前に気づけばよかったが、人間、そう都合良くはいかない。部分入れ歯は一日一回、専用の洗浄剤につけている。また食後、研磨剤の入っていない歯周囲炎対策用のハミガキと液体ハミガキの両方を使っている。口腔内は唾液によって、弱アルカリ性に保たれているが、食直後は酸性に傾くため、食直後よりも、少し時間をおいてから歯磨きする方がよいという。しかし待っているうちに歯磨きを忘れてしまう恐れがあるので、まずは液体ハミガキで口をすすぎ、その後に歯周囲炎対策用のハミガキでブラッシングして、最後に歯間ブラシを利用している。
口呼吸による口腔内乾燥も口臭の原因になる。ドクターミネは小学生時代から、副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)を指摘され、何度か治療も受けた。この病気は、鼻の構造的問題や遺伝的問題が原因である場合、完治しない。だからドクターミネは、気長に通院して、耳鼻科医の治療を受けている。そのせいか、最近では妻から口臭に関する指摘が随分減った。鼻呼吸の有り難さも実感している。
口腔内の乾燥は唾液分泌低下も原因になる。特にストレスがかかると、交感神経が優位となり、副交感神経が抑制された結果、唾液分泌が低下するし、胃腸の働きも抑制されて、いわゆる胃腸系が原因の口臭がおこる。しかし、普通に生きていれば、ストレスを完全に避けることなど不可能である。できる予防策としては、ヨーグルトや食物繊維の多い食品を食べて、腸内細菌にがんばってもらうぐらいのことであろう。ドクターミネは逆流性食道炎があるので、胸焼けを自覚している時には、大概妻から口臭を指摘される。だから胸焼けを感じるようなストレスのあるときには、なるべく他人と距離を置いて話をするようにしている。
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