2024年2月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29    
フォト
無料ブログはココログ

ウェブページ

« ドクターミネの「老・病・死」を見つめる法話 第十八回 | トップページ | ドクターミネの「老・病・死」を見つめる法話 第二十回 »

2024年2月 1日 (木)

ドクターミネの「老・病・死」を見つめる法話 第十九回

 脳神経の第一番が嗅(きゅう)神経である。嗅神経は、他の脳神経と異なり、脳幹部も視床も通らず、直接大脳皮質である内嗅皮質にはいり、記憶を司る海馬(かいば)にアクセスしている。この知識を、今年息子と二人、レストランで食事をしている時に実感した。

 食事に合わせてグラスワインを飲んでいた時、ウェイトレスから「たまたま開栓した一九九八年物のボルドー、ポムロールがあるので、一杯ずつ飲んでみますか」という申し入れがあり、二人で飲む事ができた。喉の奥から広がるわずかな香りは、誤解を恐れずに言えば「堆肥(たいひ)になり始めている落ち葉のような香り」といった感じだった。味と風味を聞かれたので、失礼を省みず、あえて正直に言った。すると彼女は「それがまさしくブーケの香りだ」と教えてくださり、ブーケの香りについて色々教えて下さった。この時、これに近い香りのワインを以前に飲んだ事を思い出した。目の前にいる息子がまだ乳飲児であった三十年前、モンシャンミッシェルを見学した帰りに寄ったフランス料理店で、やはり同じように勧められて飲んだ一九七八年物のボルドーワインが、このような香りがした。日本酒や泡盛の古酒をイメージしていたのに、実際に飲んでみたら、ほんの少し「カビ臭い」感じがして、美味いとは思えなかった事を思い出したが、それをきっかけに、次々に、忘れかけていたあの時のフランスへの家族旅行のエピソードを思い出した。

 英国に住んでいた頃の話である。英国のプリマスからフェリーに乗り、フランスのシャーバーグに渡った。この時の船内放送で、英国人がいう「シャーバーグ」は、カトリーヌ・ドヌーブが演じた「シェルブールの雨傘」の「シェルブール」だとわかった。「どうせなら、シェルブールに泊まりたかったわ」と言う妻の声を尻目に車で船外に出た。ここでドクターミネは不覚にも「ラウンド・アバウト」を逆走するという大失態をした。英国は左側通行なので「ラウンド・アバウト」は時計回りだが、フランスは右側通行なので反時計回りと逆になる。この事は知っていたのだが、初めての右側通行という緊張感からか、英国と同じ方向に回ってしまい、冷や汗をかいた。

 出発前に、恩師のチャップマン教授から、美味しいフランスワインの選び方を習っていた。「フランスのスーパーマーケットは、大量のフランスワインが並んでいて、どれが安くて美味いか、ラベルなど見てもわからん。だからまずは、現地のフランス人がどのワインを選ぶか、しばらく観察しろ。そして多くの現地人が手にしたワインこそ、安くて美味いワインだ。」この方法は大変有効で、安くて美味しいワインを手に入れる事ができた。

 帰りはフランスの「ラ・ハーブ」という港町からフェリーが出るので、車で向かったが、道に迷い、何度か現地人に尋ねたが、そんな地名は知らないと言われた。そこで「シェルブール」の事を思い出し、地名のスペルを見せたところ「ル・アーブルなら、その道を真っ直ぐに行け」と言われた。「ラ・ハーブ」は、モネの生まれ故郷の「ル・アーブル」だったのか…。

「ル・アーブル」の港では、行きに一緒だった英国人夫婦達に再会した。そこで驚いたのは、英国プリマスで会った時には、ご婦人方は皆、「スッピン」だったのだが、ル・アーブルでは全員、しっかりと化粧をしているではないか。しかも、お互いに何を買ってきたか見せあったのだが、当然ワインを買ってきていると思っていたのに、彼らは大量の、車が沈むほどのフランスビールを購入していた。嬉しそうに、フランスのビールは格別美味いんだ、といった。「やっぱり英国人だ!」

この先、新型コロナウィルス感染症やくも膜下出血で嗅覚を失えば、酒の旨さがわからなくなるかも知れない。認知症になれば海馬が萎縮するので、引き出される記憶が失われるかも知れない。だからこそ、今この瞬間が愛おしい…。

« ドクターミネの「老・病・死」を見つめる法話 第十八回 | トップページ | ドクターミネの「老・病・死」を見つめる法話 第二十回 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« ドクターミネの「老・病・死」を見つめる法話 第十八回 | トップページ | ドクターミネの「老・病・死」を見つめる法話 第二十回 »